マリオが紙になったのは見た目の工夫だけではなかった。いったいどういうことなのだろうか。
今日の論文
- 著者: Andrew Campana(アンドリュー・カンパーナ) ― 現在はコーネル大学。本論文はハーバード大学在学中の2015年に執筆
- タイトル: “Fold, Flip, Stick: Paper Mario, 2.5-Dimensionality and the Media Mix”(折る・めくる・貼る ― ペーパーマリオ、2.5次元性とメディアミックス・仮訳)
- 掲載: Kinephanos(メディア・大衆文化研究の学術誌)Vol. 5, Issue 1(2015年12月・特集「Geemu and Media Mix」), pp. 77–111 / DOI: なし(本誌はDOI未付与)
- 論文はこちら: https://www.kinephanos.ca/2015/fold-flip-stick/
- アクセス: オープンアクセス(掲載誌サイトで全文公開・CC BY-NC-ND 4.0)
どんな論文?
博士が本論文で扱うのは「次元」と「メディアミックス」だ。任天堂の『マリオ』シリーズ、とりわけキャラクターがペラペラの紙で表現される『ペーパーマリオ』シリーズを題材に、ゲーム内の次元を超えた表現を明らかにしようとする。
スーパーファミコン時代の初代『マリオカート』では「立体風」表現(mode7)が使われていた。『ペーパーマリオ』はそれをオマージュしたような表現を、意図的に再現しそのギミックをゲーム体験にも取り入れる。立体化が主流となるNINTENDO64以降も、立体の中の平面的要素を使うゲームを作り続け、『ペーパーマリオ』では、ペラペラのマリオが二次元では通れない隙間をステージの立体化で通過するギミックなどが盛り込まれ二次元と三次元の間の「2.5次元性」をメタ的にネタにし、ゲームとリアルの境界を曖昧にする。
境界が揺らぐのは次元の間だけではない。『ペーパーマリオRPG』では戦闘シーンが「舞台」として表現され、ゲームをする側(観客)とゲームの中との線引きもメタ的に扱われる。『ペーパーマリオ スーパーシール』では、パステルカラーのマリオの世界に、扇風機やドライヤーといった「リアルな電化製品」が突如持ち込まれ、マリオはそれを使って障害物を越えていく。材質の違う素材を取り込むことで、世界観は揺るがされ、リアルとゲームの境目も曖昧になる。
こうして『ペーパーマリオ』は、シリーズが積み上げてきた二次元から三次元への進化を逆戻りし、平面と立体を行き来する「能力」にしたり、紙芝居的な形式でノスタルジーを取り入れる一方、時に大きくお約束から逸脱して驚きを与え、プレイヤーを引き込む。博士は、こうした表現は『ペーパーマリオ』に特異なものではないと注意を促しつつ、その特徴を際立たせる作品群として、「2.5次元」や「メディアミックス」という概念を整理するうえで示唆的だと考察する、と私は理解した。
ここが面白い&読んでみてほしいポイント
「メディアミックス」と聞くと、漫画・ゲーム・アニメ・音楽・舞台を組み合わせるマーケティング手法をイメージする。だが博士が描き出す「メディアミックス」には、別の意味も含まれているように思える。現実の世界とゲームの世界を横断するという「媒介=メディア」の横断性だ。オモチャや本や映画へ展開されるマリオという「フランチャイズ」の意味と同時に、ゲーム世界の「内側」と「外側」の区別を壊す「メディアミックス」の概念を示そうという試みなのだ。
2026年現在、マーケティング的な意味でのマリオの展開も続いている。2021年にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンにスーパー・ニンテンドー・ワールドが開業し、2023年には『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が公開された。さらに2026年4月には続編『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』が公開され、世界興行収入10億ドルを超える大ヒットとなっている。それらの中でも、二次元のドット絵から立体的なマリオまで、様々な「次元」と「媒体」でマリオが表現されている。2023年の映画の冒頭でドット絵のマリオが飛び回るのを見て、昔のゲームとのつながりを感じた人も多いだろう。
一方で、「2.5次元」といえば、いまでは漫画やゲームが現実の役者によって演じられる舞台を指す言葉として定着しつつある。これも次元を越える表現だが、この論文でいう2.5次元性とは少し違うように思える。舞台の2.5次元は「キャラクター」の立体化が主眼で、演者は当然「3次元」である――。今まで考えてもみなかったが、次元というテーマでこれだけ色々な切り口があるとは奥が深い。論文の続きはぜひ上記のリンクからご確認いただきたい。
※本記事は、論文の全文を機械翻訳で読んだうえで執筆しています。それでも誤りが含まれる可能性があります。お気づきの点があれば、ご指摘いただけるとありがたいです。訂正を行った場合は訂正の記録に記載いたします。
カテゴリ: 論文レビュー / タグ: #マリオ #ペーパーマリオ #2.5次元 #メディアミックス #ゲーム #日本研究
出典: Campana, Andrew. “Fold, Flip, Stick: Paper Mario, 2.5-Dimensionality and the Media Mix.” Kinephanos, Vol. 5, Issue 1 (December 2015), pp. 77–111. https://www.kinephanos.ca/2015/fold-flip-stick/ (CC BY-NC-ND 4.0・DOIなし) / 掲載誌サイトで全文公開。
※カンパーナ博士は主に近現代の日本文学とメディア、特に現代詩を研究している。近著 “Expanding Verse: Japanese Poetry at the Edge of Media“(2024年12月刊)は、オープンアクセスで無料で読める。日本の現代詩の雑誌に日本語で寄稿もしているとのことだが、私は博士の業績を通じて現代詩というジャンルがあることを知った。
※メディアミックスは和製英語で、同様のマーケティング手法は欧米では「メディアフランチャイズ」と呼ばれるが、ニュアンスには若干の違いがあるようだ。
