一時停止を押したのに、キャラクターが動き出しそうな錯覚を感じたことはないだろうか。
1970年代から80年代にかけて、アニメーションの技術を発展させた代表的なアニメーター金田伊功がいる。止まった絵が動いて見えるのはなぜか、そしてその技術はどのように発展し、広まったのか。そんな問いを考えさせてくれる論文がある。
今日の論文
- 著者: Matteo Watzky(マテオ・ワツキー) ― パリ高等師範学校(ENS)在籍、日本アニメーション史を研究
- タイトル: The Dynamism of Anime Images: the Case of the ‘Kanada-style’ Movement(アニメの絵が持つ動勢 ―「金田系」の運動を例に(仮訳))
- 掲載: The Journal of Anime and Manga Studies 第4巻、2023年、pp. 190-218 / DOI: 10.21900/j.jams.v4.1195
- 論文はこちら: https://doi.org/10.21900/j.jams.v4.1195
- アクセス: オープンアクセス(CC BY-NC 4.0)
どんな論文?
この論文が言っているのは、ひとことで言えば、金田伊功の作画が広まったのは本人の天才性だけではない、ということである。絵そのものが持つ「動きうる力」と、それを受け止める1970〜80年代のメディア環境が噛み合った結果だ、と著者は考える。
著者がたどり着く着想は「動く静止画(moving stills)」である。動きとして生まれた絵が、ほかの媒体で止められても動きを失わない、という見方だ。似た概念であるマーク・スタインバーグ(Marc Steinberg)の「動的不動(dynamic immobility)」とは使い分けるべきだという。スタインバーグもトーマス・ラマール(Thomas Lamarre)も、アニメを「リミテッド・アニメーション」の枠で捉え、撮影や設計、台詞、音響といった動き以外の「別の効果」に重心を置いてきた。著者は逆に、アニメーションの動きそのものから出発する。
その手がかりが、映画研究者トム・ガニング(Tom Gunning)の「潜在的な運動(potential movement)」である。1枚の絵は、それ自体の中に動きの可能性を含む。何コマ映すか(タイミング)と、絵と絵の間をどれだけ離すか(スペーシング)が、止まった絵に運動を宿らせる。金田はビームや爆発に独自の形を与え、すでにあった不規則なコマ打ちを広めることで、この潜在的な運動を存分に引き出した、と著者は書く。
その動きを受け止めたのが当時のメディア環境だった。アニメ雑誌は映像をコマ単位で止めて誌面に並べ、止められた絵がかえって「この絵は動く」と読者に感じさせた。岡田斗司夫が指摘するように、家庭用ビデオのコマ送りもそれを後押しした。金田自身も漫画『BIRTH』を描き、作り手たちはその絵を模倣した。
金田系作画の誕生と広がりは個人の天才譚ではなく、形式・技術・社会が絡み合った歴史として読むべきだ、というのが論旨だと私は理解した。
ここが面白い&読んでみてほしいポイント
金田氏が携わったアニメはジブリ作品もそれ以外も見たことがあるはずだが、恥ずかしながら金田伊功という名前も功績も知らずにいた。論文で直接の言及はないが、金田氏が関わった作品として宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』が挙げられる(金田氏はラピュタで「原画頭」という役職に就いている)。竜の巣が描かれる場面では、雷が竜のような動きを見せる。抗うことが難しい自然の力の強大さを表しているかのようである。ほかにもジブリ映画の印象的なシーンに、金田氏の功績の跡が残っているという。
また、この論文で触れられているいくつかのエフェクトや表現は、色々な作品で目にしたことがある。それが本人の手になるものか、それを模倣した後年のクリエーターによるものかはわからないが、奇抜であるとは感じないぐらい、なじんでいる気がする。金田氏の作品は生き生きとした動きを表現するため、一枚一枚の絵を切り取ると不思議なポーズをとっていることがある。本論文は、リズムと緊張(タイミングとスペーシング)という技法を分析しながらも、それらを完成された技術としてだけでは捉えていない。技術が育まれ広がった時代背景などが丁寧に整理されている。そのおかげで、あの映像が無から突然生まれたわけではないことが理解できる。
著者が寄稿するサイトfullfrontal.moeには、日本のアニメーターへの日本語ロングインタビューが多数掲載されている。金田伊功と親交のあった上妻晋作氏に聞いた「金田伊功から『呪術廻戦』まで、上妻晋作が語るアクション作画の40年」(https://fullfrontal.moe/kozuma-shinsaku/)もその一つである。文献だけでなく、当時の制作現場を知る人々の生の声にも裏付けされた調査が、この論文の背景にあるように見える。論文と併せて読んでみてほしい。
論文の続きはぜひ上記のリンクからご確認いただきたい。
※本記事は、論文の機械翻訳とAIによる要約を参考にしつつ、原文の要所を筆者自身が確認したうえで執筆しています。それでも誤りが含まれる可能性があります。お気づきの点があれば、ご指摘いただけるとありがたいです。訂正を行った場合は訂正の記録に記載いたします。
カテゴリ: 論文レビュー / タグ: #アニメ #作画 #金田伊功 #メディア研究 #日本研究
出典: Watzky, Matteo. “The Dynamism of Anime Images: the Case of the ‘Kanada-style’ Movement.” The Journal of Anime and Manga Studies 4 (2023): 190–218. https://doi.org/10.21900/j.jams.v4.1195 (オープンアクセス・CC BY-NC 4.0)
※著者はほかにもアニメーション史のブログ Animétudes(https://animetudes.com/)を運営している。
